何故中国でライブコマースが盛り上がっているのか
中国のライブコマース市場は拡大しており、2021年には30兆円を超えるとも言われています。本記事では何故中国でライブコマースが流行しているのか、顧客が集まるライブコマースとはどのようなものなのかなどを直近のデータや成功事例を交えて紹介します。
ライブコマース先進国である中国の現状
ライブコマースの先進国とされる中国では、ライブコマース市場は拡大を続けており、 2018年には1400億元(約2兆3800億円、1元=約 17 円)、翌年の 2019 年には3倍以上の4338億元(約 7 兆3746億円)に急拡大しました。この成長は今後も続き 2021年には約2兆(約34兆円)の市場規模となることが予想されています。
出典:KPMG 「迈向万亿市场的直播电商(2020年10月)」
中国でライブコマースが流行した背景
中国では莫大な市場規模となっているライブコマースですが、ここまで流行した背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
インターネットによる情報入手が可能に
中国においてライブコマースが流行した背景の一つとして考えられる理由は、インターネットが広く普及したことです。多くの人がインターネットを通じて情報を収集・発信できる環境が整ったことで、 SNS や EC の利用が拡大しました。
配信プラットフォームが充実している
中国にでは2016年という比較的早い段階からTaobao ライブや KuaiShoライブなどのライブ配信プラットフォームサービスが豊富に存在していました。同年にはほかにも多くのライブ配信プラットフォームがリリースされ、環境が急速に整備されたことが流行を後押ししたと考えられます。
顧客がライブコマースおよび配信者に求めていることとは?
ECの販売手法は数多くありますが、なぜライブコースが人気なのでしょうか。
次項からは顧客がライブコマースに求めていることについて解説します。
商品購入における時間節約につながる情報提供
EC上には膨大な数の商品が出品されています。その中から自らのニーズを満たす商品を見つけ出すには多くの時間を必要とします。
例えば、流行の衣服を購入したいと思っている顧客がいる場合、トレンドカラーや柄、素材を意識したうえで商品を選定する必要があります。最終的にいくつかの候補に絞った段階においては、自らのセンスで購入する商品を決定します。
商品購入に至るまで多くの時間を要しますが、ライブコマースであれば最新の流行り商品を信頼感のあるインフルエンサーが紹介してくれるため、その商品を買えば選択ミスの可能性も低く、大幅な時間の節約にもつながります。
“ライブ“ならではのタイムセール
ライブコマースはテレビショッピングと同じく、短時間で消費者の心を掴む必要があります。そのため、開催前の告知でも特別価格を前面に押し出し、お得感を演出する価格戦略が取られるケースも多くあります。
ライブならではの「今だけ価格」で商品を安く購入できるというメリットも、多くのユーザーから支持される理由の一つです。
配信者とのコミュニケーション
ライブコマースには配信者とチャットなどを通じたリアルタイムのコミュニケーションが可能という特徴があります。中国のライブコマース売上上位に入るインフルエンサーの場合、配信時には平均して200万人もの視聴者が集まるほど人気の高いインフルエンサーも存在します。
配信時にはこういったインフルエンサーとコミュニケーションを取れることに魅力を感じ、視聴や購入をする人も少なくありません。
中国におけるライブコマース成功事例
中国では多くの企業がライブコマースに参入しています。
百思寒12日間のイベントでダウンジャケット300万着の販売を達成
中国で1998年に創業したアパレルブランド「百思寒(BAISIHAN)」の課題は、取り扱っているグースダウンキルトの認知度・普及率が不十分であることでした。
認知度を高めるため、百思寒(BAISIHAN)はECへ多くの広告を出稿するなどさまざまなプロモーションを行いましたが、売上が安定せず一過性の人気にしかなりませんでした。そこで、新たにライブコマースによるファン層・リピート層の獲得に乗り出しました。
百思寒(BAISIHAN)は上述でも紹介したような顧客の求めるライブコマースを実施するために、商品の選出や特別クーポンの配布、配信中のコミュニケーションなどを行い、顧客の求めるライブコマースを実現しました。
結果として、ライブコマースは大成功し、1日のライブ配信で300万着のダウンジャケットの販売を達成し、2万人以上のファンを獲得することにも成功しています。
15分で15,000本の口紅を売り上げた「口紅王子」
中国では企業以外にも、インフルエンサーが商品を紹介し、「爆発的に売上を伸ばす」成功事例もあります。
淘宝のコスメ系のインフルエンサーとして活躍しはじめた李佳琦(Austin)が2時間のライブストリームセッションの間に380本以上ものリップスティックを試した際の配信では、15分間に15,000本を販売に成功しています。
彼は元々、ロレアルの化粧品販売員であったこともあり、その販促スキルをライブコマースでも応用でき、それぞれの商品に対する深い理解度と高い説明が可能となり、顧客に支持され、その説明スキルの高さが爆発的な売上を記録する要因の一つとなっています。
中国では上述で紹介した以外にも様々な企業がライブコマースによって成功を収めています。中国で大流行しているライブコマースは、今後日本でも拡大していくことが予想されています。企業・商品への認知度向上など様々な効果があるライブコマースの導入を検討されてはいかがでしょうか。